ベン図のわかる男
夫との喧嘩の要因の一つに、金銭感覚というか、買い物スタイルの違いがあります。まあ、よくある話ですね。夫はいわゆる、安物買いの銭失いタイプで、私は失敗したくないからそこそこの値段のものを買うものの、使ってみたら「値段ほどの価値ないやんけ……」ってなる銭失いタイプです。どっちにしても失うんかよ。
あるとき、ハンドソープの残量が少なくなっていたのに、買い忘れて帰宅したことがありました。あとちょっとしかないよなあ、ミスったなあとハンドソープの容器を持ち上げたところ、ずしっと重い。
あれ?夫が買ってきて詰め替えてくれたのかな?あんなにボケ狂ってるのに。小学生の頃、長期休暇明けには毎回必ず、クラスメイトの名前を全員分きっちり忘れる記憶力なのに。覚えててくれることもあるんやな。と、感心し、容器のポンプを押して、手を洗おうとしました。
ぬる~~~~ん
……なんだこの出の悪さは。なんだこのぬるぬるは。
ボディーソープやんけ。
私「あのさ、ハンドソープの容器に、ボディーソープ詰めた?」
夫「せやで!!詰めといたわ!!」
私「もしかしてさ、100均行って、『ハンドソープ買わな!どれにしよかな。お!隣に置いてあるボディーソープ、同じ100円なのに三倍の量入ってるやんけ!!お得やー!!!』って思って買った?」
夫「せやで!僕のことようわかっとるな!!!100点!!」
私「いや14点くらいだわ。ボディーソープで手洗いたくないわ。」
夫「なんでや!一緒や!ハンドはボディーの一部や!!僕はベン図のわかる男や!!!」
ベン図のわかる男の頭の中のベン図↓↓
数日に渡って揉めたのち、私とベン図のわかる男とで、一時的にそれぞれ別のハンドソープ(ボディーソープ)を使うことになりました。プライベートハンドソープ。
一旦この騒動は鎮火したのですが、しばらく経った後、こんどはボディーソープが切れました。
ベン図のわかる男「あ!!そうや!!僕はハンドソープの容器の中にボディーソープ入れとったんや!!うおーーー!!!便利やーーーーー!!!!!」
この件のせいで、「割安なだけでなく便利」と確信したベン男は、他の物は絶対買ってこないのに、ハンドソープが切れるときだけ目ざとく察知して、忘れずにボディーソープを買って、私が知らぬ間に詰め替えるようになってしまいました。こうしてハンドソープはなかなかシェアされず、思いの外長く、別々のものを使っていました。
しかし、ベン男はなんと言っても飽きっぽいのです。ボディーソープ最強ブームもいつしか過ぎ去り、私が用意したハンドソープを一緒に使うようになっていました。うん。それでいいの。歯ブラシじゃないんだから一人一つじゃなくていいの。
そして一昨日、第二次ハンドソープの乱が勃発したのです。
そろそろなくなるなと思ったので、たまには別のハンドソープを使ってみるかと、キンモクセイの香りのものを購入した私は、うきうきで帰宅しました。
が、帰るなり、ベン男がこっちを見てくる。黙って微笑みながら、こっちをずっと見てくる。
やってんな。
確信しました。ベン男が黙って見てくるときは、必ず「やってる」ときです。
私「もしかして、ハンドソープの容器に、何か詰めた?」
微笑むベン男。
私「ボディーソープいやだって言ったじゃん!!」
ベン男「ちゃうで。ボディーソープちゃうで。」
私「え……?何……?」
ベン男「シャンプーや」
ベン図無視すんな!!!!!!!
集合handと集合hairに共通部分はねえ。絶対にねえ。だからシャンプーで手を洗うのは無し!!!いやべつにだからってわけじゃないわ、普通になし!!!
ベン図を無視する男「たしかにな。たしかにシャンプーで手なんか洗ったら、手が髪の毛になってまうわ」
私「そう!!!そうだよ!!!!手が髪の毛になってまう!!!!!(ヤケクソ」